
夕食の時間に、子どもがぽつりと言います。「〇〇先輩、推薦で決まったんだって」。
「うちも推薦にすれば?」と返したくなりますよね。ただ、ここに少し落とし穴があります。
いま「推薦」と呼ばれている入試は、実は性格の違う2つの制度に分かれています。総合型選抜と、学校推薦型選抜です。
名前が似ているせいで、親子が別々のものを想像したまま話が進むことがあります。今日はこの2つの違いを、家庭の時間軸で整理してみます。
同じ「推薦」の下に、性格の違う2つの入試があります
まず言葉の整理からいきます。
総合型選抜は、昔のAO入試にあたるものです。一番の特徴は、自分の意思で出願できることです。高校の推薦は要りません。そのかわり、志望理由書などの書類と面接で、その大学で学びたい理由を自分の言葉で示します。
学校推薦型選抜は、昔の推薦入試にあたります。こちらは高校の校長先生の推薦が前提です。成績(調査書)が主な資料になります。大学が特定の高校に枠を出す「指定校制」と、条件を満たせば誰でも出せる「公募制」があります。
ざっくり言うと、総合型は「自分で手を挙げる入試」、学校推薦型は「学校に推してもらう入試」です。
入口からして別物なんですね。
時間割がまったく違います — 総合型は9月、学校推薦型は11月
次に、締切の話です。ここが一番の注意ポイントかもしれません。
文部科学省の実施要項では、今年度の日程はこう定められています*1。
- 総合型選抜: 出願は2026年9月1日から。合格発表は11月1日以降
- 学校推薦型選抜: 出願は11月1日から。合格発表は12月1日以降
「どちらも年内に決まる入試」ではあります。ただ、出願まで2ヶ月の差があります。
そして、この2ヶ月の差は、準備の逆算では半年以上の差になります。
総合型は9月に出願するので、志望理由書などの書類は夏休みのうちに仕上がっている必要があります。書類のもとになる「大学でやりたいこと」を探す時間も要ります。そこまで含めると、高3の春には動き始めていたい計算です。
一方、指定校の学校推薦型では、多くの高校で夏から秋にかけて校内選考があります。11月の出願より前に、実質的な勝負が校内で終わっているわけです。そして校内選考の材料になる評定は、高1の成績から積み上がっています。
「秋になったら推薦のことを考えよう」だと、どちらのルートでも少し遅いのです。
やることも別物です — 書類と面接の重さ、評定の重さ

準備の中身も比べてみます。
総合型選抜では、志望理由書や活動報告書など、本人が書く書類を必ず評価に使うことになっています。さらに、面接による評価も必ず行うと実施要項に明記されています。プレゼンテーションや口頭試問を含む、時間をかけた面接です。
つまり総合型の主戦場は、「書く」と「話す」です。
学校推薦型選抜の主な資料は調査書、つまり日々の成績です。評定は後から取り返しがきかないので、こちらの主戦場は「高1からの積み上げ」と言えます。面接も原則行われます。
そしてもう一つ、大事な共通点があります。どちらの入試でも、小論文や共通テストなどの評価方法を少なくとも一つ組み合わせることになっています。
「推薦だから学力は見られない」は、今はもう通用しないと考えたほうが安全です。
保護者の方に気をつけてほしいこと3つ
ここまでを踏まえて、家庭でできる注意点を3つに絞ります。
1つ目。子どもの「推薦にする」が、どっちの話かを確認する。
総合型のつもりなのか、指定校を狙っているのか。ここがずれたまま応援すると、時期も準備も的外れになります。実際、私立大学の入学者の約6割は、この2つを合わせた「年内入試」で決まっています*2。もう少数派の入試ではないからこそ、言葉の解像度が大事です。
2つ目。「専願か併願か」「共通テストは課されるか」を募集要項で見る。
同じ総合型でも、合格したら入学が前提の大学と、併願できる大学があります。共通テストを課す大学もあります。ここは大学ごとに本当にバラバラです。名前の印象で判断せず、募集要項を親子で一度開いてみてください。
3つ目。一般選抜との両立の重さを見積もる。
総合型の書類と面接の準備は、思っている以上に時間を食います。夏に書類、秋に面接。その間も一般選抜の勉強は止められません。全部を全力でやろうとすると、どちらも中途半端になりがちです。どこまで両立するかは、先に家族で話しておきたいところです。
まず、今夜どっちの話か聞いてみてください
長々と比べてきましたが、今夜できることは1つだけです。
「推薦って、総合型のこと?それとも指定校?」と聞いてみる。それだけです。
答えが返ってくれば、準備の時間割は今日の記事のとおりに引けます。「分からない」と返ってきたら、それはそれで収穫です。親子で同じスタートラインに立てたということですから。
詳しいことは、学校の進路指導の先生に聞くのが一番の近道です。校内選考の時期や指定校の枠は、学校ごとに違うからです。
まとめ
- 「推薦」の下には総合型選抜と学校推薦型選抜という別物の入試がある
- 総合型は9月出願=夏に書類完成。指定校は校内選考が実質の本番
- 総合型の主戦場は「書く・話す」、学校推薦型は「高1からの評定」
- どちらも面接があり、学力もきちんと見られる
- 今夜の一手は「どっちの話?」と聞くこと
なお、面接練習の進め方は、中3向けに書いたこちらの記事の考え方がそのまま使えます。
「面接練習した?」でケンカになる前に。中3が一人でできるAI面接練習
志望理由書や小論文は、独学だと「これでいいのか」の判断が一番難しいところです。中学受験から大学受験まで、添削指導には長く付き合ってきました。面接練習も300人以上と重ねてきました。書類の添削や模擬面接だけを単発で、というご相談も受け付けています。
*1:令和9年度大学入学者選抜実施要項(文部科学省)による: https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1346785.htm
*2:文部科学省の調査に基づく: https://benesse.jp/juken/202506/20250616-1.html































