個人指導塾 拓杜 の舞台裏

石川県鹿島郡中能登町にある学習塾です。指導の裏側、教室には現れない部分の描写を通して個人指導塾拓杜の雰囲気を感じていただければ幸いです(^^)

レイブラッドベリのSF小説

はじめに 


 
はてなブログ今週のお題「人生に影響を与えた1冊」とのことですが私は迷うことなく華氏451という本を選びたいです。 大学時代に、この本を卒業研究として半年間かけて原文を翻訳したことがあります。その時に、課題を四苦八苦したことから人生について考えさせられました。
 
 華氏451という作品
舞台は、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会。そこでは本の所持が禁止されており、発見された場合はただちに「ファイアマン」(fireman ― 本来は『消防士』の意味)と呼ばれる機関が出動して焼却し、所有者は逮捕されることになっていた。(表向きの)理由は、本によって有害な情報が善良な市民にもたらされ、社会の秩序と安寧が損なわれることを防ぐためだとされていた。密告が奨励され、市民が相互監視する社会が形成され、表面上は穏やかな社会が築かれていた。だがその結果、人々は思考力と記憶力を失い、わずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていた via 華氏451度 - Wikipedia
 
華氏451に対する私の印象 
 
私は小さい頃から本さえ読ませておけば問題ないと周りから考えられていた本好きでしたので、本が規制されるストーリーというのが新鮮でした。今でこそ、図書館戦争という作品もありますが、異国の地での雰囲気と胡散臭い空気が漂う印象が格別です。後半から加速していく状況変化もSF小説として、今の作品にないくらい驚きに満ちたものだと私は自信をもってオススメもできます。ラストも非常に衝撃的なものになります。子供心にも本が読めず、テレビだけだと人間が堕落していく様が想像出来たのも強い印象に残ります。 
 
当時の私と本との立ち位置 
 
 大学時代の私は、翻訳する研究ゼミに参加していて、いろんな作品をゼミで翻訳していました。フォレストガンプの訳にしびれ、今も有名な戸田奈津子さんに憧れていました。いろいろな作品に相応しい日本語をつけられるような翻訳家になりたいというのが夢でした。翻訳の通信講座も続けていましたが、語学や雑学知識を人並み以上というレベルには達していませんでした。そういう夢を持ち、通信講座を受けている状況に満足していた気がします。今から考えると、思い切り安易な発想をしていました。だから大学4年生になり、半年間かけて下訳も本格的な翻訳も1人で行う翻訳課題が最終課題だと知った時は素直に喜びました。 実際には、お金も時間も費やすものが想像以上でした。
 
華氏451のために使ったお金 
 
大学時代は、ファミリーレストランを中心として食べ物屋でバイトばかりしていました。バイトで稼いだお金は主に生活費に充てていました。しかし、この時に少しのローンとアルバイトで貯めたお金で、ゼミのために大きな買い物をしました。今ではお目にかかることが減りましたが、当時では文章作成といえばワープロでした。だから思い切って、華氏451を訳するために購入した時のドキドキを思い出します。あの時は30万近く払った記憶があるので、今思うと必要だったのか疑問に思います。 
Flickrおばあちゃんのワープロ by hazu3 
 
この翻訳にかけた時間 
 
この時期はひたすら、ワープロのキーボードを叩く、ファミレスでバイト、大学を繰り返していました。4年生だったので、講義もなく、バイト割合が多かったのも事実です。だから、バイトで9時間、睡眠5時間、遊びと翻訳が半々の生活が続いていた気がします。今思うと、自分がしたいことを模索していました。 

翻訳では食べていけない 

実は、華氏451を翻訳している時にお世話になりっぱなしの教授に言われたことがあります。「翻訳家として食べていくのはやめたほうが良いよ!」と。この言葉の意味と重みは、今なら十分分かるのですが、当時の私には受け入れがたい言葉でした。翻訳ゼミの教授からでしたので、勝手に裏切られた気分になっていました。しばらくは将来の選択肢が浮かばず、無気力で不安しかありませんでした。教授から散々言われた、サイドワークとして食べていく程度なら頑張れば翻訳家になれる。ただ本業としてやっていくのには、いろいろなものが絡んでくることも、時間とともに理解できました。 物事のキツイ面を見ようとしなかったのは私自身だと、それに取り組もうとしなかったんだと痛感しています。
 
時間と共に自信が芽生える 
 
このゼミの課題は、この年は達成した人が挑戦者の半分以下だった記憶があります。私は、運良く達成できました。多くの人が締め切りに間に合わないと、途中で消えて行きました。私も何度も諦めようとしましたが、徹夜作業を続けて締め切りまでに提出することができました。同時に、少し遅めの就職活動でも受験支援産業に入ることが決まり、人生のスタートを切ることが出来ました。ゼミ課題をやり遂げた自信が、就職活動に踏み切る勇気をくれたと思います。 
 
 世界に一冊の本 
 
私の部屋には華氏451の本があります。市販されているものとは違い、ハードカバーも色も異なっています。本のタイトルは華氏451なのですが、実はタイトルの横には、「原作 レイブラッドベリ 訳○○○○」○○○○には、私の名前が入っています。この本は、ゼミの教授が課題修了のご褒美として製本してくれた私の大学時代における最初で最後の作品です。これを、卒業式の時に手渡された時の感激は今でも昨日のことのように覚えています。 
 
だから、この本は私にとって大切な一冊です。